相続に強い専門家に依頼するメリット
1 相続問題は情報の勝負になる
相続問題は、情報の勝負になることが多々あります。
相続に関する情報をもっているかどうかによって、最終的な解決の内容が大きく異なってくる可能性があります。
そして、必要な情報をどれだけ得られるかは、専門家によって大きく異なってきます。
相続に強い専門家であれば、必要な情報を十分に得られる可能性が高まり、より妥当な解決へとつながる可能性が高いでしょう。
2 複数の専門家の領域にまたがる情報が必要になる
ここで注意しなければならないのは、相続で必要となるのは、複数の専門家の領域にまたがる情報であることが多いということです。
相続は、法律の話だけが問題になるわけではなく、税金の話や不動産の話が問題になることがあります。
たとえば、不動産の相続が問題になった場合は、不動産を誰が取得すべきかだけが問題となるわけではありません。
相続分との関係では、不動産をどのように評価すべきかが問題になります。
また、不動産を売却することが予定されている場合は、不動産の売却方法やこれに伴う経済的負担も問題になってきます。
さらに、不動産の相続、売却について、税金が問題になる可能性もあります。
3 どのような専門家に依頼すべきか
以上の点を踏まえると、どのような専門家に依頼するのが良いのでしょうか?
もちろん、1人の専門家があらゆる領域に精通していれば、それはかなりの強みになるでしょう。
とはいえ、1人の専門家があらゆる領域に精通していなかったとしても、複数の専門家が連携することができれば、それぞれの専門領域をカバーすることができます。
結論としては、複数の領域をカバーしている専門家、複数の専門家で連携して対応することができる専門家が、相続に強い専門家であることとなります。
4 相続に強い専門家への依頼
以上を踏まえると、相続に強い専門家は、相続について、複数の専門家の領域にまたがって、必要な情報を得ることができる専門家であることとなります。
このような専門家に依頼することができれば、網羅的に情報を得ることができ、より妥当な解決に導くことができるでしょう。
相続の生前対策をお考えの方へ
1 相続の生前対策は、様々な専門家の領域が絡み合っている
相続の生前対策には、様々な専門家の領域が絡み合っています。
このため、1つの専門家の考えに基づいて生前対策を行ったとしても、他の専門家から見ると、不適切な生前対策になってしまっているといったことが起こり得ます。
相続の生前対策では、複数の専門家の考え方を総合し、最も適切な対策をとることが必要です。
ここでは、1つの専門家の考えによって生前対策が行われた結果、取り返しのつかない事態が生じてしまった例を説明したいと思います。
2 相続税対策のため、自社株式の分散が行われた事例
この例では、会社経営者が有する自社株式について、相続税対策が取られていました。
会社経営者が税理士に相談したところ、自社株式を少しずつ安価で第三者に譲渡するのが有効であるとのアドバイスがなされました。
自社株式を第三者に譲渡することで、会社経営者が有する株数を減じることができ、会社経営者が有する資産(将来の相続財産)を減少させることができます。
また、自社株式を少しずつ第三者に譲渡する場合には、配当還元方式という評価方法を用いることができます。
このため、配当が少額または0円である場合には、自社株式の評価額を抑えることができ、税負担を抑えつつ、自社株式を第三者に移転することができます。
この結果、この会社は、何十名もの少数株主が存在する状態となってしまっていました。
また、会社経営者が有する株式の割合が、発行済株式総数の3分の2を割り込んでいました。
このため、有事の際に特別決議を行わなければならない場合には、少数株主に対しても株主総会の招集通知を行った上で、3分の2以上の株主の同意を得なければならない状態になってしまいました。
こうした状態を解消するため、後継者の代になってから、少数株主からの株式の買取を進めることとなりました。
しかし、後継者の代は、会社の株式の評価額がさらに高額になっており、株式の買取のため、かなりの支出を要する状況に陥っていました。
結局、株式の買取のための資金調達の目途が立たず、株式の買取の計画については、断念せざるを得なくなってしまいました。
相続の生前対策を行うに当たっては、相続税を軽減するという観点だけでなく、将来の会社経営の安定化等の観点も必要であったと言うことができます。
そのためには、弁護士等の法律の専門家のアドバイスも得ておく必要があったと言えます。
3 ご相談をお考えの方へ
私たちは、複数の専門家が共同しながら相続に関する相談をお受けしています。
複雑なご相談にも対応可能ですので、相続の生前対策にお悩みの方はご相談いただけましたらと思います。
遺産分割についてお悩みの方へ
1 遺産分割は法的知識が重要
どのように遺産分割を行うかについては、相続人全員が合意を行えば、基本的には、自由に決めることができます。
このため、相続人全員が合意を行うのであれば、特定の相続人が多めに遺産を取得することも、それぞれの相続人が均等に遺産を取得することも、可能であるということになります。
とはいえ、相続人がどのように遺産分割を行うかを決めるにあたっては、法的知識を持っているかどうかで、円滑に話し合いが進むかが違ってくるのが実情です。
以下では、このことについて、場合分けをして、具体的な理由を説明したいと思います。
2 特定の相続人が多めに遺産を取得することとする場合
特定の相続人が多めに遺産を取得するとの遺産分割を行うことは、現在でも、時々あります。
もっとも、近年では、法律上は相続分をベースに遺産分割を行うこととなるという考え方が浸透してきていますので、始めから、特定の相続人が多めに遺産を取得するとの前提で話し合いを進めてしまうと、他の相続人の心情を害してしまい、遺産分割協議がスムーズに進まなくなるおそれがあります。
このため、特定の相続人が多めに遺産を取得するとの提案を行うにはあたっては、何らかの法的な裏付けを用意しておいた方が納得感を得られやすくなる可能性があります。
特定の相続人が多めに遺産を取得すべき法的な裏付けとしては、たとえば、以下のようなものが挙げられます。
① 他の相続人がすでに被相続人から贈与を受けている
他の相続人がずでに相続人から贈与を受けている場合には、その相続人に特別受益が存在し、その相続人の相続分が減じられる可能性があります。
② 特定の相続人が被相続人の財産の形成・維持について特別の貢献を行った
特定の相続人が被相続人の財産の形成・維持のため、特別の貢献を行った場合には、その相続人に寄与分が認められ、その相続人の相続分が増加する可能性があります。
3 それぞれの相続人が均等に遺産を取得することとする場合
それぞれの相続人が均等に遺産を取得することとする場合の注意点は、何をもって均等に遺産を取得したものと考えるかです。
遺産が金融資産のみであれば、あまり問題が生じることはありませんが、遺産に不動産が含まれている場合には、その不動産をいくらの評価額と計算するかが問題となることがあります。
このような不動産の評価方法について、あらかじめ法的な知識を得ておくと、遺産分割協議がスムーズに進みやすくなるでしょう。
4 ご相談をお考えの方へ
以上のとおり、遺産分割では、あらかじめ法的知識を得て、協議に臨むことができるかどうかが重要な分かれ目になってくることがあります。
相続を行うことになりましたら、お早めにご相談いただければと思います。
遺言についてお悩みの方へ
1 遺言を作成する際には、将来のシミュレーションが必要
多くの場合、遺言は、将来、残された方々に、どのように相続財産を引き継ぐかを定めるものとなります。
遺言は、将来のことを想定して作成されるものであるため、様々なことを確認しておく必要があります。
特に、将来、どのような法律問題が発生する可能性があるかについては、しっかりとシミュレーションをしておく必要があります。
ここでは、将来のシミュレーションが必要な法律問題の例として、遺留分の問題を説明したいと思います。
2 遺留分侵害額請求がなされた場合を想定する
遺言については、特定の人がすべてまたは大部分の相続財産を取得するとの内容のものが作成されることが多くあります。
しかし、このような遺言を作成すると、相続財産を取得しなかった相続人から、遺留分侵害額請求がなされる可能性があります。
相続人については、法律上、相続財産について最低限主張できる権利として、遺留分が定められています。
遺留分は、子や配偶者が相続人の場合は、子や配偶者の法定相続分の2分の1になることが多いです。
ここで注意しなければならないのは、2020年に施行された改正相続法により、遺留分の主張がなされた場合は、法的には、遺留分権利者に対しては、遺留分に相当する金銭の支払をしなければならない、とされたことです。
このため、法律上は、金銭の代わりに、取得した相続財産のうちの不動産を分けるといった対応は、できないこととされてしまいました。
したがって、遺言により財産を取得した人は、遺留分権利者との合意が成立しない限り、遺留分に相当する金銭を準備しなければならないことになります。
相続財産について、金融資産が占める割合が大きい場合は問題が少ないのですが、不動産が占める割合が大きい場合には、どのようにして遺留分に相当する金銭を準備するかが、切実な問題になってきます。
このように、2020年に施行された改正相続法により、遺言により財産を取得した人は、遺留分侵害額請求がなされることにより、かなり追い込まれた状態となることが起き得る状況となっています。
以上を前提とすると、たとえば、相続財産のすべてまたは大部分を特定の相続人が取得するとの遺言を作成するのではなく、遺留分を主張する可能性のある相続人に対しては、不動産を現物取得させることとするといった遺言を作成するといった対応も、考えなければならない状況となってきています。
以上のとおり、遺留分の主張がなされる可能性がある場合は、誰がいくら程度の遺留分の主張を行い、これに対して、どのように対応するのかについて、将来のシミュレーションを行っておくことが望ましいと言うことができます。
3 ご相談をお考えの方へ
このような将来の問題について、十分なシミュレーションを行うには、専門家に相談するのが望ましいでしょう。
遺言の作成をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
相続放棄をお考えの方へ
1 相続放棄は時間との勝負になる
相続放棄をお考えの場合は、できる限りお早めに専門家へご相談ください。
相続放棄は、基本的には、被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内に、管轄権のある家庭裁判所に、申述書を提出することにより行う必要があります。
3か月の期間が経過してから相続放棄を行おうとしても、原則として、家庭裁判所が申述を受理することはありません。
例外として、相続財産と相続債務の存在をまったく知らなかった場合には、申述が受理されますが、こうした特別の事情がなければ、申述が受理されることはありません。
この3か月の期間は、意外に短く、期限までに申述を行うことができるかどうかが問題となることもあります。
以下では、このような実例を説明し、相続放棄が時間との勝負であることを説明したいと思います。
2 相続財産の存在を知っていたが、相続債務の存在を知らなかった事例
この事例では、相続人は、被相続人が亡くなったことについては、当日に知っていました。
また、相続人は、被相続人が自宅の土地、建物を所有していることについても、熟知していました。
その後、被相続人が亡くなってから2か月半が経過した頃、信販会社から、被相続人に500万円の未返済の債務があること、相続人に対して返済を求めることを内容とする通知が届きました。
先程の説明から、相続人は、自宅の土地、建物が相続財産であることを熟知していたこととなりますので、相続財産の存在を知ってから3か月の期間が、わずか2週間後に迫っている状況でした。
この事例では、相続人は、期限の1週間前に弁護士に相談を行い、弁護士が短期間で申述書等を準備し、家庭裁判所に提出しましたので、事なきを得ました。
相談が少しでも遅れていたら、期限が過ぎてしまっていた可能性もありました。
3 被相続人の最後の住所が分からなかった事例
この事例では、被相続人の甥姪が相続人でした。
相続人は、被相続人との交流がなく、被相続人がどこで生活していたのかも知りませんでした。
ある日、突然、相続人宛に、被相続人の債権者を名乗る人物から、被相続人の債務の返済を相続人に対して求めるとの通知が届きました。
相続人は、事情が分からなかったため、債権者に連絡を取りましたが、債権者は、返済を求めるとの一点張りでした。
このような状況であったため、相続人は、相続放棄を行うことを決意しました。
ところが、ここで1つ問題が発生しました。
相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申述書を提出することにより行います。
この事例では、被相続人との交流がなかったため、被相続人の最後の住所が分からず、どこの家庭裁判所に申述書を提出すれば良いのか、分かりませんでした。
その後、相続人は、弁護士に相談しました。
弁護士は、被相続人の住民票の除票を取得して、被相続人の最後の住所を特定することを提案しました。
しかし、被相続人の最後の住所を特定するためには、順次、相続人の親の戸籍、相続人の祖父母の戸籍、被相続人の最後の戸籍を取得しなければならず、かなりの時間を要しました。
最終的に、3か月の期間が経過する直前に、被相続人の住民票の除票を取得することができ、被相続人の最後の住所を特定することができましたので、管轄権のある家庭裁判所を特定することができました。
この事例も、少しでも相談が遅れていたら、期限内に相続放棄の申述を行うことができない可能性がありました。
4 ご相談をお考えの方へ
このように、相続放棄については、時間との勝負になることがしばしばあります。
思わぬ事情により、期限内に相続放棄を行うことができないといったことも起こり得ます。
相続放棄をお考えの方には、お早めにご相談いただくことをお勧めします。
遺留分を請求したいとお考えの方へ
1 遺留分を請求する期限に注意する
遺留分侵害額請求については、法律上、期間の制限が設けられています。
具体的には、遺留分が侵害されている事実を知ってから1年以内に、遺留分侵害額請求を行う意思表示をする必要があるとされています。
この1年の期間が経過した後に遺留分の主張を行ったとしても、遺留分の権利は時効によって消滅してしまいます。
遺留分が侵害されている事実を知ってから1年間とは、多くの場合、遺言の存在を知ってから1年間になります。
2 期限までに何をしなければならないか
ここで注意したいのは、後日、遺留分侵害額請求を行う意思表示を1年の期間内に行ったことを、どのように証明するかということです。
一般的には、相手方に対して内容証明郵便を送付し、相手方がいつどのような郵便を受け取ったかということを、郵便局の証明を通して客観的に明らかにしておくということです。
しかし、近年では、遺留分の時効の存在が広く知られつつあることに伴い、1年の期間が経過するまで、郵便の受け取りを拒否したり、所在不明の状態にしたりしておき、期間が経過するまでやり過ごそうという対応をとる相手方が、散見されるようになってきています。
このような場合には、期限内に相手方に内容証明郵便を送付することができず、遺留分の権利が消滅することとなってしまいかねません。
このため、近年では、相手方が内容証明郵便の送付を阻止するといった対応をとることを想定しつつ、どのようにして期限内に意思表示を行ったことを客観的に明らかにするかを検討する必要が生じてきています。
このような場合には、相手方の就業先に郵便物を送付する(ただし、相手方のプライバシーを侵害しないよう、送付方法について留意する必要があります)、公示による意思表示を行うといった対応が考えられます。
もっとも、こうした対応を検討したり、実施したりするためには、時間を要します。
たとえば、期限の1週間前に相手方が所在不明の状態になっていることが明らかになったとしても、期限内に手続をとることができない可能性が高いです。
この点を踏まえると、遺留分侵害額請求を行う場合は、期限の直前に行動に移るのではなく、1か月程度の余裕を見て行動に移る必要があると言えます。
3 ご相談をお考えの方へ
以上の理由から、遺留分の請求を検討される場合は、時間的にある程度の余裕を見て相談されることをお勧めします。
私たちは、相手方が所在不明になっていた案件も含め、遺留分についての様々なご相談をお受けしていますので、遺留分についてのご相談事がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
相続税についてお悩みの方へ
1 相続税申告を行うには、法令、通達、実務等を熟知している必要がある
相続税は、他の税目と比較して、法令、通達、実務等で、詳細なルールが定まっているという特殊性があります。
また、こうしたルールは極めて多岐にわたるため、都度調べながら申告書を作成すると、ルールの見落としが生じがちです。
こうした、極めて多岐にわたるルールを熟知していなければ、誤った申告書が作成されてしまいかねません。
そして、誤った申告により、過大な相続税を納付することとなってしまえば、過大に納付した分が、そのまま損失となってしまいます。
また、誤った申告により、過少な相続税の納付になってしまった場合は、後日、税務署から、誤りの指摘がなされ、本税を追加で納付しなければならないばかりか、加算税や延滞税も納付しなければならなくなってしまいます。
こうした事態を避けるためには、法令、通達、実務等を熟知した専門家に相続税の申告を依頼することをお勧めします。
2 法令、通達、実務等を熟知した専門家とは
それでは、法令、通達、実務等を熟知した専門家かどうかは、どのようにして見分ければ良いのでしょうか。
質問に対する受け答えで判断することができる場合もありますが、多くの場合、専門家がどの程度熟知しているかを判別することは、困難を伴うものと思います。
ここでは、いくつかの外形的な判断基準を挙げたいと思います。
① 特化した専門家かどうか
実情をお話しすると、多くの税理士は、相続税申告については、年間1件受任しているかどうかです。
相続税に特化し、年間でまとまった件数の相続税申告を行っている税理士は、実のところ少数派です。
このように、相続税に特化した専門家かどうかは、1つの判断基準になります。
② 専門家の側から問題提起ができるかどうか
専門家によっては、受け取った資料の数字を拾うだけで申告書を作成してしまうといったことがあり得ます。
しかし、実際には、受け取った資料には、様々な手掛かりが存在しています。
このような手掛かりを見つけ出し、専門家の側から問題提起を行うことができるかどうかによって、ルールを熟知している専門家かどうかが判断できることもあります。
3 ご相談をお考えの方へ
私たちにご相談いただければ、相続税申告に特化した専門家がお悩みをお伺いし、対応させていただきます。
相続税についてのご相談を検討されている方は、お気軽にお問い合わせいただけましたらと思います。
相続について税理士に相談するべきタイミング
1 初回相談については、早めの相談を
相続が発生すると、相続税の申告をしなければならないことがあります。
具体的には、相続財産の価格が、3000万円+法定相続人数×600万円を超える場合は、相続税の課税対象になる可能性があり、申告を検討する必要が出てきます。
相続について税理士に相談すべきタイミングについては、初回相談は早ければ早いほど良いでしょう。
多くの場合、相続税の申告は、人生で1~2度あるかないかという話だと思います。
このため、相続税の申告から納付までの流れについて、まったくイメージがわかず、いつ、どのようなことをすれば良いのかも分からないことが多いものと思います。
このことから、まずは、早めにご相談いただき、相続税の申告から納付までの流れについて、イメージをつかんでいただくことが重要だと思います。
相談をした時期が遅かったため、期限までに間に合わないといった事態を避けるためにも、まずは、早めにご相談いただいた方が良いのではないかと思います。
2 2回目以降については、ケースバイケース
2回目以降の相談のタイミングについては、ケースバイケースだと思います。
とはいえ、たとえば、次のような場合は、早めにご相談いただいた方が良いのではないかと思います。
① 配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例を利用する場合
この場合には、特例を適用する前提として、遺産の帰属が確定している必要があります。
遺言が存在しないのであれば、相続人全員の同意により、遺産分割協議を成立させる必要があります。
また、小規模宅地等の特例の対象となる土地が複数ある場合は、これらの不動産を取得したすべての相続人が、どの不動産に特例を適用するかについての同意を行う必要があります。
このように、相続人全員の同意が必要になるため、早めにご相談いただき、特例を適用するための協議を行っておくのが望ましいです。
② 物納を行う場合
物納を行う場合は、物納の準備のため、一定の期間を要します。
まず、不動産を物納する場合は、その不動産が測量済みであること等、一定の要件を満たす必要があります。
そのための測量を行うには、隣地所有者全員の同意が必要となりますので、長ければ3か月程の期間を要することもあります。
また、物納を行うにあたっては、国税庁の許可を得る必要があるため、許可申請書の準備や許可手続のための時間も必要となります。
相続の無料相談をお考えの方へ
1 相続は落とし穴が多い
相続は、様々な場面で、単純な話であるとの誤解を抱いてしまいがちですが、その実、たくさんの落とし穴が潜んでいる分野であると言うことができます。
近年では、ネットや書籍で調べれば、容易に情報を得ることができます。
このため、ネットや書籍で得た知識を用いて、様々な主張がなされることも多いです。
ところが、こうした知識については、思わぬ落とし穴が潜んでいることもございます。
ネットや書籍で得た知識に基づいて主張したものの、その内容が誤りであるといったことが起こり得ます。
さらに言えば、専門家であっても、こうした落とし穴にはまってしまい、誤った知識に基づいて主張してしまうということも起こり得ます。
たとえば、こうした落とし穴の1つには、以下のようなものがあります。
2 遺留分は相続分の2分の1?
遺留分については、父母や祖父母のみが相続人になる場合は相続分の3分の1になるものの、それ以外の場合は相続分の2分の1になるという話がなされることがあります。
この話からすると、配偶者が遺留分の請求を行う場合は、配偶者の相続分の2分の1ということになりそうです。
確かに、多くの事例では、上記の考え方で、遺留分を計算することができます。
しかし、現実には、このような計算方法を行うと、落とし穴にはまってしまうことがあります。
たとえば、次のような事例はどうでしょうか?
・相続人は、被相続人の配偶者、被相続人の兄弟姉妹
この場合、配偶者の相続分は4分の3ですので、配偶者の遺留分は8分の3であるとの計算を行ってしまうかもしれません。
実際は、配偶者の遺留分は2分の1です。
これは、遺留分の合計が2分の1になるところ、兄弟姉妹には遺留分が存在しないため、配偶者が2分の1の遺留分のすべてを主張することができるようになるためです。
実際、上記と同様の相続関係で、弁護士が、配偶者の遺留分を8分の3と計算し、訴訟を提起している事例を見たこともあります。
このように、遺留分の計算1つをとっても、専門家でも誤解してしまうような落とし穴が潜んでいるのです。
3 お困りごとがあれば、まずはご相談を
このように、相続は、ネットや書籍で調べた知識のみで解決することは危険であり、専門家に相談することが望まれる分野です。
無料相談であれば、専門家に相談する際の抵抗感も少ないと思います。
私たちも、相続についての無料相談をお受けしていますので、相続でお困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
不動産評価に強い専門家に相談すべき理由
1 相続と不動産評価
相続財産の分け方について、相続人間での意見調整が必要になる場合があります。
このような場合で、相続財産に不動産が含まれているときには、不動産をどのように評価するかが問題となってきます。
具体的には、次のような場面です。
・ 不動産を特定の相続人が取得し、他の相続人に対して代償金を支払うこととする場合
・ 相続税の申告を行うにあたり、不動産の評価を行う必要がある場合
ところで、不動産の評価は、専門家によって、得手不得手が大きく異なってきます。
不動産の評価が必要な場合には、不動産評価に強い専門家に相談し、妥当な評価を行ってもらうべきでしょう。
以下では、この点について、具体例を挙げて説明したいと思います。
2 無道路地の評価が問題となった例
この事例では、当初、固定資産評価額に基づいて、相続の話し合いが進められていました。
ところが、相続財産である不動産の1つが、宅地として高い評価額が付されていたものの、道路に接していませんでした。
本来、道路に接していない土地は、建物を建築することができませんので、評価額が大きく値下がりすることとなります。
固定資産評価額は、その土地の評価額としては、過大であるように思えました。
そこで、周囲の土地を確認したところ、その土地と道路との間にある土地が、親族の名義になっていることが判明しました。
さらに調査したところ、その土地は、もともと、道路との間にある土地と一体の土地になっていたものの、その後、道路との間にある土地が親族に譲渡されたため、道路と接しない状態になったことが判明しました。
本来、道路との間にある土地が親族に譲渡されたことにより、道路と接しない状態になったのであれば、その時点で、固定資産評価額の減額調整がなされるようにも思えますが、実際には、その時点で減額調整がなされていませんでした。
このような事情から、問題の土地は、道路に接している土地と同じ扱いがなされ、本来よりも過大な固定資産評価額が付されたままとなっていたのです。
このような事情が判明したため、問題の土地については、不動産鑑定士による鑑定評価がなされ、鑑定結果に基づいて、相続についての話し合いが進められることとなりました。
相続のご相談から解決までにかかる時間
1 相続のご相談から解決までの流れ
相続についてご相談いただいてから、解決に至るまでの流れについては、以下のとおりです。
① 相続についての調査
② 相続人全員との話し合い
③ 相続財産の払戻、名義変更の手続
以下では、それぞれのおおまかな内容を説明し、解決までに要する時間の目安を明らかにしたいと思います。
2 相続についての調査
相続についての調査は、相続人の調査と相続財産の調査になります。
相続人の調査では、相続関係を明らかにする戸籍をひと通り取得します。
ここで取得した戸籍は、後日の、相続財産の払戻、名義変更の手続でも用いることとなります。
必要な戸籍をすべて取得するのに必要な時間は、相続関係によって異なります。
一般に、相続人が子や父母のみである場合は、戸籍を取得するのに要する時間は短くて済み、目安は1から3週間になります。
他方、相続人が兄弟姉妹や甥姪である場合は、戸籍を取得するのに多くの時間がかかります。
また、転籍等、戸籍の移動を繰り返している場合も、多くの時間が必要になります。
相続財産の調査では、不動産、預貯金、有価証券の有無、評価額等を調査します。
調査に要する時間の目安は1か月前後です。
ただし、財産についての情報が乏しく、不動産のある市町村、預貯金のある金融機関、有価証券のある証券会社が判明していない場合には、さらなる時間を要することとなります。
3 相続人全員との話し合い
相続人全員と話し合い、誰がどの財産を取得するかを決めます。
話し合いにどれだけの時間を要するかは、相続人同士の関係、各相続人の主張によって、ケースバイケースです。
数週間のうちに話し合いがまとまることもありますし、何か月も話し合いを続ける必要があることもあります。
4 相続財産の払戻、名義変更の手続
相続人全員との話し合いに基づき、協議書を作成し、相続財産の払戻、名義変更の手続を行います。
相続財産の払戻、名義変更に要する時間の目安は、1から2か月です。
不動産が存在する場所を管轄する法務局の数、金融機関や証券会社の数次第で、さらに時間を要することもあります。
相続について専門家に相談するべきタイミング
1 相続について、専門家に相談すべき場面
相続について、専門家に相談すべき場面には、様々なものがあります。
代表的な例を挙げると、以下のとおりです。
2 相続の手続を行う場面
相続の手続を行う場面で、専門家のアドバイスが必要になることがあります。
たとえば、相続財産に不動産が含まれている場合は、相続登記の手続が必要です。
また、預貯金、株式、投資信託、公社債についても、相続の手続を行わなければ、払戻や換金を行うことができません。
そして、このような手続を行うに際して、どのような書類を作成し、どのような書類を準備すべきか、専門家の助言が必要になることがあるでしょう。
このような相続の手続を行う場面では、相続財産の分け方について、相続人のおおむねの意見がまとまった段階で、専門家に相談するのが良いでしょう。
これは、相続財産の分け方次第で、相続の手続の内容が変わってくることがあるためです
3 相続についての意見調整を行う場面
相続財産の分け方について、相続人間で意見が一致しないことがあります。
このような場合には、相続人間の意見を調整しなければ、その先の相続の手続を進めることができません。
このような場合には、相続人間の意見の不一致が明らかになった段階で、専門家に相談することが考えられます。
専門家から、意見調整のためのヒントが得られることがあるためです。
また、専門家が間に入って、相続人間の意見調整を行うこともあります。
ただし、特別受益、寄与分等の法的問題についての意見対立がある場合は、早い段階で専門家のアドバイスを得た方が良いことがあります。
これらの法的問題によって相続財産の分け方にどのような影響が生じるかを把握することにより、説得力のある話し合いを進めることが期待できるからです。
4 相続についてのご相談整を行う場面
このように、専門家に相談すべきタイミングは、問題となっている事項、相続人の意見、相続財産の内容等によって、異なってきます。
実際には、相談すべきタイミングかどうか、判断に迷うことも多いと思いますので、何らかの問題が生じたら、あるいは生じそうであったら、一旦は専門家に相談してみるという考え方でも良いのではないかと思います。
この場合は、相談をお受けした専門家の側で、どの段階でどのような関与を行うのが望ましいのかも含めて、アドバイスさせていただきたいと思います。
専門家による相続財産(不動産)の調査
1 不動産の調査の必要性
相続手続では、最終的には、被相続人名義のすべての財産について、名義変更や払戻等を行うこととなります。
このように、被相続人名義のすべての財産について手続を行うためには、相続財産の調査を漏れなく行うことが必要不可欠です。
それでは、漏れなく調査を行うためには、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか?
ここでは、不動産の調査方法について、いくつかの注意点を説明したいと思います。
2 共有の不動産に注意
不動産に関しては、毎年4月から5月に届く固定資産税納税通知書の課税明細書を確認すれば、被相続人が所有していた不動産を網羅的に把握することができます。
このため、固定資産納税通知書を確認して、被相続人名義の不動産を調べることが多いでしょう。
ここで注意しなければならないのは、固定資産納税通知書は、被相続人が単独で所有している不動産と、被相続人が誰かと共有している不動産とで、別々に発行されるということです。
被相続人が単独で所有している不動産の固定資産税納税通知書を見逃すことはあまりないと思いますが、被相続人が誰かと共有している不動産の固定資産税納税通知書については、注意が必要です。
特に、被相続人以外の人が共有資産代表者として届出がなされていると、固定資産税納税通知書の宛名書には、被相続人以外の人が表示され、被相続人が表示されませんので、見逃しの原因になってしまいます。
さらに、共有資産代表物者が被相続人とは別の住所に住んでいると、被相続人の住所には固定資産税納税通知書が届きすらしないということも覚えておきましょう。
では、被相続人が誰かと共有している不動産を調査したい場合は、どうすれば良いのでしょうか?
この場合は、市町村役場に赴き、名寄帳(固定資産課税台帳記載事項証明書)を取得することが考えられます。
市町村役場の窓口において、被相続人が誰かと共有している不動産も含めて、名寄帳(固定資産課税台帳記載事項証明書)の発行を申請すると、共有不動産の名寄帳(固定資産課税台帳記載事項証明書)も取得することができます。
3 1月1日以降の名義変更に注意
固定資産納税通知書や名寄帳(固定資産課税台帳記載事項証明書)に記載される不動産は、被相続人がその年の1月1日時点で所有していた不動産になります。
このため、これらの書類には、その年の1月1日以降の名義変更が反映されていません。
たとえば、被相続人がその年の1月1日以降に不動産を取得した場合には、新たにその不動産は被相続人の財産となりますので相続財産に含まれるのですが、固定資産税納税通知書には記載がないこととなります。
このような場合に、固定資産税納税通知書に基づいて相続手続を行うと、被相続人が新たに取得した不動産を見逃してしまうこととなってしまいます。
このような事態を避けるためにも、被相続人がその年の1月1日以降に不動産を買ったり売ったりしている場合には、特に注意する必要があります。
専門家に相談する際の流れ
1 専門家への相続の相談
相続について、専門家に相談する場合は、どのような流れになるのでしょうか?
以下では、おおむねの流れを説明したいと思います。
2 相談前
相談前の段階では、あらかじめ、どのような事項を相談するかをまとめておいた方が良いでしょう。
飛び込みに近い形で相談することも考えられなくはないですが、相談時に聞きたいことを聞けず、結局疑問点が残ったままになってしまうことも起こり得ます。
このようなことを避けるためには、事前に、どのような事項を相談するかをまとめておいた方が良いでしょう。
まとめる際は、メモ書き程度のものでも構わないと思います。
また、相談前の段階では、親族関係や相続財産に関する情報を、あらかじめまとめておいた方が良いかもしれません。
相続では、相談の前提として必要となる情報が多く、わずかな違いによって結論も大きく異なってきます。
このため、親族関係や相続財産についての説明を相談の際にするとなると、それだけで多くの時間を使ってしまい、質問に対するしたいことを質問できずに終わってしまうといったことも起こり得ます。
また、説明漏れ等が生じると、専門家の回答が、本来とはまったく異なる回答になってしまうおそれもあります。
こうした事態を避けるためには、あらかじめ、親族関係や相続財産に関する情報をまとめておいた方が良いでしょう。
この点についても、メモ書き程度のものでも構わないと思います。
3 相談時
相談時の流れは、専門家によって、少々異なってくるところがあります。
まずは、自分から必要な情報、疑問に思っていることを伝えた上で、専門家が疑問点に回答するといった流れになることもあり得ます。
他には、専門家が重要と考えるポイントを質問して一通りの情報を共有した上で、疑問点に回答するという流れになることもあり得ます。
どちらの流れが良いかは、質問内容や質問される方によっても異なってきますので、当法人では、ご相談の際、最も適切と思われる形で、ご相談をお受けしています。
4 相談後
相談後は、相談のみで問題点が解消した場合は、特に行うことはありませんが、その後も専門家に依頼することを希望される場合は、どのような事項を、どのような費用負担で専門家に依頼するかを話し合い、正式に委任契約を締結することとなります。
各専門家が協力できることの強み
1 相続分野の特徴
相続分野は、他の分野と比較しても、各専門家が協力する必要性が高い分野です。
まず、相続分野には、様々な専門家が関与します。
協議がまとまらない場合は、弁護士が関与しなければならないこととなります。
相続財産に不動産が含まれている場合は、不動産の名義変更のため、司法書士が関与することとなります。
相続税の課税価格が基礎控除額を越えるため、相続税が課税される場合は、税理士が関与しなければなりません。
特定遺贈で農地の名義変更を行う場合には、行政書士が関与することもあります。
次に、複数の専門家が関与する場合には、それぞれの専門家が連携して対処すべき必要性が大きいです。
連携が不十分だと、相続の問題を最終的に解決できないという事態が発生することがあります。
以下では、具体的な失敗例を説明し、それぞれの専門家が連携することの重要性を説明したいと思います。
2 連携が不十分な失敗例
この案件では、相続人間の対立が激しかったため、弁護士が相続人間の意見を調整し、その後、司法書士が不動産の名義変更を行うことを予定していました。
弁護士が相続人間の意見を調整した結果、ある相続人が不動産を取得し、他の相続人が預金を取得することとなりました。
そして、弁護士が遺産分割協議書を作成し、相続人全員の実印と印鑑証明書を得て、一通りの書類が揃うこととなりました。
その後、不動産を取得した相続人が司法書士に連絡を取り、不動産の名義変更を依頼したところ、司法書士から、名義変更することはできないとの回答がありました。
その理由は、以下のとおりです。
登記簿で記録されている、被相続人の住所が、被相続人がかなり前に住んでいた住所のままとなっており、その後、住所変更が行われないままとなっていました。
このような場合、登記簿上の所有者と、被相続人の最後の住所が異なることとなりますので、登記簿上の所有者と被相続人とが同一人物であることを証明する必要があります。
このような場面では、一定の場合には、遺産分割協議書とは別に、登記簿上の所有者と被相続人とが同一人物であることを記載した申述書を作成し、相続人全員の実印と印鑑証明書を得る必要があります。
こうした書類が集まらなければ、不動産の名義変更を行うことができないこととなってしまいます。
このことが発覚してから、他の相続人に、申述書に実印を押印することを求めましたが、他の相続人は、すでに問題なく預金の払戻ができていたためか、申述書への押印を拒否してきました。
このため、相続人間の協議が成立し、預金の手続が済んだものの、不動産だけが名義変更できないという事態が生じてしまいました。
3 各専門家が協力する必要性
先述の事態を避けるためには、弁護士と司法書士が連携して、どのような書類を作成すべきかを事前に協議しておくべきであったと言えます。
このような例からも、相続分野では、各専門家が協力する必要性が大きいことが分かると思います。
相続の相談先を探される際は、専門家同士の協力体制が整っている事務所を選ばれることをお勧めいたします。
専門家による相続人の調査
1 相続人の調査の必要性
相続の問題では、必ず、相続人の調査を行う必要があります。
相続人間で誰がどの財産を取得するかという協議を行う場合には、すべての相続人が協議に参加する必要があります。
また、不動産や預貯金の相続手続を行う場合にも、すべての相続人が書類作成に関与する必要があります。
このように、すべての相続人が誰であるのかを特定するためには、相続人の調査を確実に行う必要があります。
わずかな調査の漏れにより、後日、他に相続人が存在することが発覚すると、協議や手続を一からやり直す必要が生じてしまいます。
ここでは、相続人の調査の具体的な方法について、説明したいと思います。
2 相続人の調査方法
相続人の調査にあたっては、あらかじめ、詳しい親族から、親族関係を聞いておくのが良いと思います。
このような情報を得ておくと、戸籍等の調査を行った際、調査漏れがあるかどうかをチェックする1つの手がかりになります。
相続人の調査は、市町村役場の戸籍を取得することによって行います。
相続人の調査の際には、どのような場合であっても、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を取得する必要があります。
出生から死亡までの間に、改製(法改正等によって戸籍を作り直すこと)があった場合には、必ず、改製前の戸籍も改製後の戸籍も取得する必要があります。
また、出生から死亡までの間に、転籍(本籍地の移動)があった場合には、転籍前の戸籍も転籍後の戸籍も必要になります。
結婚や離婚等の身分関係の変動があった場合も同様です。
本籍地の変更があると、複数の市町村役場で戸籍を取得する必要があります。
このため、新しい戸籍の記載内容を精査し、その前の本籍地がどこにあったかを確認し、その前の本籍地の市町村役場で古い戸籍を取得するといった作業が必要になってきます。
本籍地の変更が何回もなされていると、いくつもの市町村役場で戸籍を取得しなければならなくなります。
他にどのような戸籍が必要になるかは、相続関係によって異なります。
たとえば、被相続人の子のみが相続人になる場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍に加えて、相続人の現在の戸籍を取得すれば足ります。
被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合は、さらに、被相続人の父母の最後の戸籍、被相続人の兄弟姉妹の現在の戸籍も必要になります。
3 相続人の調査の依頼
このように、相続人の調査は、複数の市町村役場で戸籍を取得する必要があります。
また、戸籍の内容を精査し、漏れなく、確実に、戸籍を取得しなければなりません。
この点を確実に行いたい場合は、相続人の調査を専門家に依頼することも考えられます。
専門家による相続財産(金融資産)の調査
1 金融資産の調査の難しさ
被相続人が有している預貯金や株式、投資信託、債券について、あらかじめ、正確に把握できていることは、ほとんどないのではないかと思います。
被相続人が有していた金融資産については、どのようにすれば調査を行うことができるのでしょうか?
以下では、金融資産の調査の方法を説明したいと思います。
2 預貯金の調査
預貯金については、被相続人の自宅に残された通帳、証書が手がかりとなります。
通帳、証書が残されていると、その銀行、支店に預貯金口座が存在する可能性が高いからです。
したがって、通帳、証書が残されている銀行、支店について、問い合わせを行い、口座の有無や残高を確認することとなります。
このとき、その銀行、支店に複数の口座が存在する可能性もありますので、すべての口座の有無、残高を確認します。
また、近年では、銀行を通して投資信託や債券の取引が行われていることがありますので、投資信託や債券についても、調査の対象とします。
事案によっては、通帳、証書をもってしても、銀行、支店が特定できないことがあります。
他の相続人から、通帳、証書の有無についての情報が開示されないことがあるためです。
また、そもそも、通帳、証書を紛失していたり、ペーパーレスで通帳、証書が発行されていなかったりすることもあるでしょう。
このような場合には、被相続人の住所の近辺の銀行、支店を総当たりで調査することも検討します。
このときには、可能であれば、全店照会を行い、問い合わせた支店ではなく、他の支店での取引の有無も確認します。
3 株式、投資信託、債券の調査
株式、投資信託、債券については、被相続人の自宅に証券会社から届く、取引残高報告書により、取引のある証券会社や銀行、支店を特定することができます。
また、取引残高報告書を確認すれば、株式、投資信託、債券の残高を確認することができるでしょう。
この場合も、預貯金と同様の理由から、残高報告書では、証券会社や銀行、支店を特定できないことがあります。
このような場合には、証券保管振替機構の登録済加入者情報の開示請求を用いることを検討します。
登録済加入者情報の開示請求を用いれば、被相続人が有価証券の取引を行っていた証券会社や銀行、支店がどこであるかを調べることができます。
相続を依頼する場合の専門家の選び方
相続問題に関係する専門家は、様々です。
以下では、専門家に依頼する場合の選び方について、いくつかのポイントを挙げたいと思います。
1 相続に関係する知識を網羅的に把握していること
相続に関係する専門家というと、どのような専門家を思い浮かべるでしょうか。
相続に関係する専門家は、弁護士、税理士、司法書士、行政書士等、様々です。
こうした専門家は、それぞれ、役割が異なっています。
たとえば、相続について意見が一致せず、相続人間で意見を調整しなければならなくなった場合には、弁護士が関与することとなります。
また、相続財産の額が一定額を超えており、相続税の申告が必要になった場合には、税理士が関与することとなります。
他には、相続についての意見がまとまり、不動産の名義変更をすることとなった場合には、多くの場合、司法書士が関与することとなります。
このように、相続に関係する専門家は様々ですが、多くの場合、各専門家は、別の専門家のことについて、詳細かつ正確な知識を持っているわけではありません。
このため、相続では、特定の専門家が自分の持っている知識に基づいて処理を行ったところ、その処理が、他の専門家にとっては、適切ではなく、かえって問題を発生させるということが起きがちなのです。
たとえば、司法書士が遺産分割協議書を作成したものの、その遺産分割協議書が、かえって、相続人間の紛争の火種となる、弁護士が相続人間の意見をまとめて遺産分割協議書を作成したものの、その分割方法だと、相続税の税額軽減の制度を用いることができないといった問題が生じた例があります。
以上から、相続では、自分以外の専門家の知識も含めて、網羅的な知識を把握している必要があることとなります。
2 相続についての詳細かつ最新の知識をもっていること
相続では、事案ごとの些細な違いにより、どのような対処をすべきか、どのような書類を作成すべきかが大きく変わってくることがあります。
たとえば、不動産の登記簿上の住所が被相続人の古い住所のままになっており、被相続人の最後の住所と異なっている場合、不動産の名義変更で必要な書類は、事案によって異なってきます。
直前の登記申請時の戸籍を提出すれば名義変更ができる場合もあれば、相続人全員が実印を押印し、3か月以内に発行された印鑑証明書を添付しなければ、名義変更することができないといった場合もあります。
以上のとおり、事案ごとの些細な違いを見逃すことなく、その違いを踏まえてどのような対処を行うべきか、詳細な知識を把握している必要があります。
また、相続では、様々な分野で、取り扱いの変更が起きています。
たとえば、相続税については、毎年のように、大小問わず、課税のルールの変更が行われています。
他にも、どのような書類が存在すれば不動産の登記申請ができるかについて、法務局の取り扱いは、逐次の変更がなされています。
相続の場面では、このような取り扱いの変更に対応するためにも、常に最新の知識をもつようにしておく必要があります。
3 相続を依頼する場合の専門家の選び方
このように、相続の場面では、網羅的知識を持っている専門家、詳細かつ最新の知識を持っている専門家に依頼するのが重要であることとなります。
この点では、相続に特化した専門家に相談するのが、より適切な解決を行う上での近道になると言うことができます。
専門家による相続の調査
1 相続の場面で必要な調査
被相続人が亡くなると,残された相続人で,相続の手続を行う必要があります。
相続の手続を行う前提として,様々な事項を調査する必要があります。
このような調査を十分にしないまま相続の手続を進めてしまうと,後日,思わぬ事実が判明し,手続をやり直さなければならなくなる恐れがあります。
それでは,相続の場面で必要な調査としては,どのようなものがあるのでしょうか?
代表的なものは,以下のとおりです。
・ 遺言の調査
・ 相続財産の調査
・ 相続人の調査
以下では,それぞれの調査について,具体的な必要性を説明していきたいと思います。
2 遺言の調査の必要性
遺言の調査については,意識的に行われることが少ないと思いますが,現実には,遺言があるのではないかという前提で,きちんと調査を行うのが望ましいです。
遺言が存在しないとの前提で,相続人全員で遺産分割協議を行い,誰がどの遺産を取得するかを決めてしまったとします。
その後,遺言が発見されると,一度成立した遺産分割協議は、無効になる可能性があります。
一度成立した遺産分割協議が無効となってしまうと,不利益を受ける相続人とそうではない相続人との間で,深刻な争いが生じる可能性があります。
以上を踏まえると,まずは,遺言があるかどうかを確認することが重要であることが分かります。
3 相続財産の調査
相続財産としてどのような財産があるかを確定できない限り,相続の手続を進めることはできません。
ところが,実際には,父母の財産内容を正確に把握できていることは,通常は少ないでしょう。
一般的には,父母が普段利用している銀行がどのあたりかくらいは分かるかもしれませんが,何銀行の何支店に口座があるかを網羅的に把握できていることは少ないでしょう。
不動産についても,自宅以外に田畑や山林を所有している場合があるかと思いますが,生前の段階から,どこのどの範囲の不動産を所有しているかを正確に把握できていることは少ないでしょう。
特に,保険については,証書を発見しない限り,どの保険会社にどのような保険契約があるかを把握することは困難でしょう。
このため,相続の場面では,被相続人の自宅に残されていた通帳,権利証,証書等の書類や断片的な情報から,相続財産の調査を行わなければならないことが,しばしばあります。
4 相続人の調査
相続の手続は,相続人全員が関与して行う必要があります。
このため,相続人の調査は,相続の手続を進める不可欠の前提になります。
相続人が誰であるかは自明のことと思われるかもしれません。
ところが,現実には,相続人の調査を行い,その結果,初めて他の相続人の存在が判明することがあります。
たとえば,被相続人に知られていなかった子が存在することが判明するといったことは,現実に起こり得ます。
相続の手続を行う際には,前提として,被相続人の出生から亡くなるまでのすべての戸籍を取得する必要があります。
このような戸籍を取得することによって,初めて,相続人が誰かが確定されることとなります。
相続した不動産の登記のための必要書類
1 登記申請の必要性
不動産を誰が相続するかが決まったとしても,ただちに,登記上の名義人が変更されるわけではありません。
登記上の名義人を変更するためには,不動産を取得した人が申請を行う必要があります。
相続によりなされる名義変更には,様々な種類があります。
以下では,遺産分割が成立した場合に,基本的には,共通して必要となる書類について,説明を行いたいと思います。
2 必要書類(戸籍,住民票関係)
基本的に必要になる書類は,以下のとおりです。
① 亡くなった人の相続人を特定する戸籍
② 相続人全員の現在の戸籍
③ 亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票
④ 不動産を取得する相続人の住民票
①の相続人を特定する戸籍として,どのようなものが必要になるかは,相続関係によって異なります。
たとえば,相続人が配偶者と子,または子のみである場合は,亡くなった人に何名の子がいるかを特定するために,亡くなった人の出生から死亡までの戸籍が必要になります。
②は,遺産分割協議の時点で,相続人が存命であることを念のために確認するために必要になります。
③は,戸籍に記載されている亡くなった人と,登記上の名義人とが同一人物であることを確認するために必要になります。
住民票の除票に記載されている住所と登記上の住所が一致するかどうかによって,両者が同一人物であるかどうかが判断されます。
④は,不動産を取得した相続人の住所を確認し,新たな名義人の登記上の住所をどこと記載すべきかを確認するため,必要になります。
3 その他の必要書類
上記の書類以外には,遺産分割の成立を証明するための書類が必要になります。
どのような書類が必要になるかは,成立の仕方によってケースバイケースです。
たとえば,遺産分割協議書に基づいて名義変更を行う場合は,相続人全員が実印を押印した協議書,相続人全員の印鑑証明書が必要になります。
加えて,不動産の評価証明書が必要になります。
登記申請の際に課税される登録免許税を算定するためです。