相続放棄をした場合の死亡退職金に関するQ&A
死亡退職金とは何でしょうか?
亡くなられた人が存命でしたら、本来、退職時に、退職金の支払がなされていたはずです。
在職中に死亡すると、亡くなられた人が受け取るはずだった退職金が宙に浮いてしまうこととなります。
このような場合には、本来の退職金とは別に、亡くなられた人と一定の関係がある人に対して、死亡退職金が支払われることがあります。
ただし、在職中に死亡した場合に、必ず、死亡退職金の支払がなされるわけではありません。
会社が退職金規程を置いており、死亡退職金を支払うものと規定している場合に、死亡退職金の支払がなされることとなります。
死亡退職金の支払がなされるのは、業務上の死亡に限られません。
業務上の死亡ではなくても、在職中に亡くなられた場合には、死亡退職金の支払がなされることとなります。
相続放棄をしてしまうと、死亡退職金は受け取れませんか?
相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったこととなりますので、相続財産を引き継ぐことはできないこととなってしまいます。
それでは、相続放棄をした場合には、死亡退職金も受け取ることができなくなってしまうのでしょうか?
死亡退職金は、基本的には、相続財産ではなく、遺族固有の権利であると考えられています。
このため、死亡退職金は、相続放棄をしたとしても、受け取ることができます。
ただ、退職金規程の定め方次第では、例外的に、亡くなられた人が退職金請求権を取得し、これを相続人が相続財産として引き継ぐべきものと解釈される場合があります。
たとえば、退職金規程で受取人が定められていない場合については、相続人が相続財産として引き継ぐべきものと解釈されることがあります。
もっとも、多くの退職金規程では、配偶者が優先的に受け取る、内縁関係であっても受け取ることができる、生計を同一にしている親族が受け取ることができる等、相続人のルールとは異なるルールで受取人が定められていますので、基本的には、相続財産ではないと解釈されることが多いと言えます。
このため、多くの場合では、相続放棄をしたとしても、死亡退職金を受け取ることができることとなります。
相続放棄した人が死亡退職金を受け取った場合、相続税は課税されますか?
相続財産とみなし相続財産(後述)の総額が3000万円+600万円×法定相続人数を超える場合には、相続税が課税される可能性があります。
死亡退職金、生命保険金は、相続税の課税上は、みなし相続財産とされています。
このため、死亡退職金は、相続税の課税対象になり得ることとなります。
一般に、みなし相続財産については、500万円×法定相続人の非課税枠が設けられています。
たとえば、法定相続人が3人の場合、死亡退職金について、1500万円の非課税枠が存在することとなります。
ここで注意しなければならないのは、相続放棄を行った人は、先述の非課税枠を利用することができないということです。
このため、相続放棄をした人が受け取った死亡退職金については、全額が相続税の課税対象になります。