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相続放棄と限定承認の違いやそれぞれのメリット

  • 文責:代表 弁護士 西尾有司
  • 最終更新日:2024年3月22日

1 単純承認と相続放棄、限定承認

相続が発生した場合には、被相続人の財産や債務を引き継ぐかどうかを選択することとなります。

特に何の手続きも行わなかった場合には、最終的に、相続人は、被相続人の財産や債務を引き継いだものとして扱われます。

これを、単純承認と言います。

単純承認をした場合には、さらに遺産分割を行わない限り、すべての財産や債務を相続分に基づいて引き継いだものとして扱われます。

財産は引き継ぎ債務は引き継がない、特定の財産だけを引き継ぎ、その他の財産は引き継がないといった、一部を選択しての引き継ぎは認められないこととなっています。

これに対して、一定の手続きを行えば、被相続人の財産も債務もすべて引き継がないとすることもできます。

これを、相続放棄と言います。

相続放棄は、基本的には相続が発生したことを知ってから3か月以内に家庭裁判所で申述することにより、手続きを進める必要があります。

相続放棄を行うと、すべての債務を引き継がないことになる反面、相続によっては、すべての財産を引き継ぐことができないことになります。

単純承認や相続放棄の他に、限定承認をするという選択肢もあります。

限定承認は、相続財産を清算し、債務の弁済を行い、残余があれば相続人が引き継ぐことを言います。

相続財産によっては債務の全額を弁済することができなかったとしても、相続人は残債務を弁済する責任を負わないこととなります。

端的な表現を用いると、限定承認は、財産から債務を差し引き、プラスが残る場合のみ、プラス分を引き継ぐ手続きになります。

単純承認と異なり、相続放棄と限定承認は、債務を引き継がないものとすることができます。

債務を引き継がなくても済むということが、相続放棄と限定承認に共通するメリットとなります。

相続財産に多額の債務が含まれている場合には、相続放棄か限定承認を選択した方が良いこともあるでしょう。

それでは、相続放棄と限定承認という2つの選択肢のうち、どちらを選択すれば良いのでしょうか。

この場合は、それぞれの手続きに特有のメリットを踏まえて選択を行う必要があります。

ここでは、相続放棄と限定承認の特有のメリットについて、3つの場合に分けて説明したいと思います。

2 債務超過であることが明らかである場合(すべての財産を引き継ぐ必要がない場合)

債務超過であることが明らかである場合には、債務を引き継がない手続きを選択することも多いものと思います。

加えて、債務だけでなく、すべての財産も引き継がなくても良い場合があるでしょう。

相続財産を利用していない場合や、相続財産が乏しい場合が、これに該当すると考えられます。

このような場合には、相続放棄と限定承認のどちらにメリットがあるのでしょうか。

相続放棄については、手続きが簡略であるというメリットがあります。

相続放棄は、ほとんどの場合、家庭裁判所に申述書を提出し、家庭裁判所から照会書が届いた場合には、必要事項を記入して家庭裁判所に照会書を返送すれば、手続きが完了することとなります。

限定承認については、相続人全員が申述書を提出し、照会書を提出した後に、官報公告を行った上で、相続財産の清算手続きと債務の弁済を行う必要があります。

相続財産の清算については、地方裁判所の競売手続きを用いるか、家庭裁判所に鑑定人選任申立を行い、鑑定を行った上で、鑑定価格以上で相続人が買い取るとの手続きを取らなければならないとされています。

債務の弁済についても、判明している債権者に対して債権申出を依頼し、一通りの債権の内容が明らかになってから、弁済を行う必要があります。

債務が相続財産よりも多い場合には、債権額に応じて同じ割合で配当することとなるため、債権者に配当表を送付し、債権者に配当表を確認してもらった上で、配当を実施することが多いです。

また、相続財産に不動産や有価証券が含まれている場合には、譲渡所得が発生するため、所得税の準確定申告、納付を行う必要も生じます。

このように、限定承認は手続きが複雑であり、専門家に依頼しなければ対応できないことも多いです。

こうした背景から、すべての財産を引き継ぐ必要がない場合には、相続放棄の手続きを用いられることがほとんどです。

一方で、限定承認にもメリットがあります。

それは、後順位の相続人がいる場合に、限定承認を行えば、後順位の相続人を手続きに巻き込まなくても済むということです。

相続放棄を行うと、後順位の相続人がいる場合には、後順位の相続人に相続の権利と義務が移転することとなります。

このため、自分が相続放棄を行ったがために、後順位の相続人が債務を負うこととなったり、相続放棄を行わなければならなくなったりすることがあります。

このようなことが起きると、後順位の相続人に迷惑がかかると考える場合には、果たして自分が相続放棄を行って良いものかどうか、悩ましいこともあると思います。

他方、限定承認を行った場合には、自分の順位で相続財産の清算、債務の弁済の手続きが取られることとなり、後順位の相続人には相続権は移転しないこととなります。

清算した結果、残債務があったとしても、自分も後順位の相続人も、何らの責任も負わないこととなります。

このため、限定承認の場合は、後順位の相続人に何らの影響も与えることなく、債務について対処することができます。

3 債務超過であることが明らかである場合(特定の財産を引き継ぐ必要がある場合)

債務超過が明らかである場合は、債務を引き継がないものとしたいと考えることが多いと思いますが、特定の財産については引き継ぐ必要がある場合があります。

たとえば、相続財産である不動産に居住している場合が代表例です。

このような場合に、何らかの方法で、債務の弁済を避けつつ、引き継ぐ必要がある財産を引き継ぐ方法はないのでしょうか。

まず、限定承認については、先買権の制度が設けられています。

限定承認では、相続人は、先買権を行使することにより、引き継ぐ必要がある相続財産を買い取ることができるのです。

一方、相続放棄を行った場合であっても、相続人が存在しないこととなり、相続財産清算人が選任された場合には、相続財産清算人と交渉し、引き継ぐ必要がある相続財産を買い取る方法を用いることが考えられます。

このように、限定承認でも、相続放棄でも、引き継ぐ必要がある相続財産を取得する道筋が存在しています。

それでは、上記の2つの方法については、それぞれ、どのようなメリットが存在するのでしょうか。

まず、限定承認して先買権を行使する方法については、確実性が高いというメリットがあります。

相続放棄の場合は、自分が相続放棄を行ったとしても、必ずしも相続人が存在しないこととなるわけではなく、後順位の相続人が存在する可能性があります。

後順位の相続人も全員相続放棄を行えば、相続財産清算人を選任し、相続財産清算人との間で買取交渉を行う道筋が開けることとなりますが、一人でも相続放棄しない相続人が存在すると、その相続人が相続財産を取得してしまうため、相続財産清算人は選任されないこととなります。

また、相続放棄により相続財産清算人が選任されることとなったとしても、厳密には、相続財産清算人が必要な相続財産を自分に売ってくれるという保障はありません。

たとえば、第三者がより高値で買い取るとの提案を行ってきた場合には、相続財産清算人は、その第三者に売ってしまう可能性もあります。

これに対し、限定承認の場合は、自分が限定承認の申述を行えば、後順位の相続人が登場することはありませんので、手堅く、先買権を行使する流れに移行することができます。

また、限定承認の場合は、相続人には、権利として先買権を行使することが認められていますので、より高値で買取を希望する第三者がいたとしても、相続人の側で相続財産を取得することができます。

一方で、相続放棄後に相続財産清算人から買い取る方法にも、メリットが存在します。

限定承認により先買権を行使する場合には、鑑定人の選任申立を行い、鑑定人が示した鑑定価格以上で買取を行う必要があります。

そして、鑑定人に鑑定を行ってもらうために、鑑定人に対する報酬を支払う必要があります。

不動産の筆数が多い場合は、鑑定人の報酬が数百万円にのぼることもあります。

また、自分で限定承認を行う以上、取得を希望しない相続財産についても、責任をもって清算の手続きを完了する必要があります。

取得を希望しない不動産等については、裁判所の競売手続きにより、換価を行わなければなりません。

このため、自分で競売手続きを進めなければならないという手続き的な負担を負うことになりますし、裁判所に予納金を納めなければならないという経済的な負担も負うこととなります。

これに対し、相続放棄の場合は、相続財産清算人との交渉次第とはなりますが、査定書や公的評価(固定資産評価額、相続税評価額等)をベースに、買取の交渉ができることが多く、むしろ、鑑定人に費用を払って鑑定してもらうことは少ないです。

また、相続放棄の場合は、相続財産清算人が相続財産を清算する責任を負うこととなりますので、取得する必要がない相続財産について、自分が換価すべき責任を負うこともないこととなります。

4 債務超過であるかどうかが不明である場合

債務については、調査を尽くしたとしても、すべてを調べきることができない場合があります。

個人に対する債務が存在する場合、登録されていない業者(いわゆるヤミ金)に対する債務が存在する場合には、信用情報機関の調査等では情報を得ることができません。

このため、忘れた頃に、こうした債権者から請求が成されるといったことが起こり得ます。

こうした債務が存在するかどうか分からず、相続財産が債務超過であるかどうかが不明である場合には、こうした債務が存在しないのであれば相続財産を引き継ぎ、こうした債務が存在するのであれば、自分自身は債務を弁済する責任を負わないこととしたいという希望を持つことがあると思います。

こうした場面では、限定承認は適切な選択肢であると考えられます。

限定承認を行うと、相続財産の範囲で弁済する責任は負うものの、それ以上に、自分自身の財産から弁済する責任は負わないこととなるからです。

この点で、限定承認には独自のメリットがあると言うことができます。

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