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相続税申告において贈与税の申告がされていない場合の対処

  • 文責:代表 税理士 西尾有司
  • 最終更新日:2023年2月15日

1 多額の贈与について、贈与税の申告、納付がなされていない場合

相続税申告の際、生前に被相続人から多額の贈与がなされているにもかかわらず、贈与税の申告、納付がなされていないことが判明することがあります。

たとえば、相続税申告の資料をいただき、被相続人の預貯金の出入金の記録を確認すると、相続人に対して多額の送金がなされていることが確認できることがあります。

そして、相続人に事情を確認すると、実は、被相続人から相続人に対して多額の贈与がなされていたものの、贈与税の申告、納付がなされていないことが判明することがあります。

贈与税の基礎控除は毎年110万円です。

つまり、ある年の1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の総額が110万円以下であれば、贈与税は課税されませんが、110万円を超える場合は、贈与税の申告を行い、贈与税を納付しなければなりません。

現実には、被相続人からの多額の生前贈与について贈与税の申告・納付がなされておらず、相続税の申告の場面で、このことが明らかになるといった事態が発生することがあります。

2 贈与税の問題を放置すると、どうなるのでしょうか?

このような場合には、贈与について何らの対処も行うことなく、相続税の申告だけを行えば良いのではないかと考えてしまうかもしれません。

しかし、相続税申告を行う案件で贈与の問題を放置することは、お勧めできません。

相続税が課税される案件では、後日、税務署によって預貯金の出入金履歴の調査がなされる可能性があります。

そして、税務署は、相続人に対する多額の贈与が行われていることを把握すると、贈与税の課税がなされるべきであるとの判断を行う可能性があります。

こうなると、本来の贈与税だけではなく、加算税(50万円までは10%、50万円を超える部分は15%)や延滞税も納付しなければならなくなり、本来よりも多額の税負担を負うこととなってしまいます。

このような事態を避けるためにも、相続税申告に先立ち、または相続税申告と同時に、贈与税についても申告を行うことを検討すべきでしょう。

期限後であっても自主的に贈与税の申告を行えば、加算税の税率を5%に抑えることができますし、延滞税が課税される期間も最小限に抑えることができます。

その結果として、課税される贈与税を、最小限の額に抑えることが可能になります。

3 どのような申告を行えば良いのでしょうか?

贈与の事実が判明した場合にどのような申告を行えば良いかは、贈与が行われた時期によって変わってきます。

たとえば、被相続人が2020年6月12日に亡くなったと仮定して、具体的にどのような申告を行えば良いかを説明したいと思います。

① 相続開始前3年よりも前になされた贈与(2017年6月11日までになされた贈与)

このような贈与については、贈与税の期限後申告のみを行います。

贈与税の本税についてのみ申告・納付を行うと、後日、税務署から、贈与税の加算税、延滞税についての納付書が届きますので、届き次第、加算税、延滞税の納付を行います。

以上の結果として、贈与により生じる税負担は、㋐贈与財産額についての贈与税の本税、㋑贈与税の加算税、延滞税になります。

② 相続開始前3年から、相続開始日の属する年の1月1日よりも前になされた贈与(2017年6月12日から2019年12月31日までになされた贈与)

このような贈与について、贈与税の期限後申告を行うこと等については、①と同じです。

違うことは、相続開始前3年以内になされた贈与については、相続税の3年以内贈与加算の対象となるため、相続税の課税対象にもなるということです。

まず、相続開始前3年以内になされた贈与財産の額については、相続税の課税価格に加算して、相続税の申告を行わなければなりません。

次に、期限後申告の際に算定された贈与税については、相続税から引き算することができます。

ただし、引き算の対象になる贈与税は、本税に限られます。

加算税、延滞税については、引き算の対象にはなりません。

以上の結果として、贈与により生じる税負担は、差し引きの結果、㋐贈与財産額についての相続税、㋑贈与税の加算税、延滞税になります。

③ 相続開始日の属する年の1月1日以降になされた贈与(2020年1月1日以降になされた贈与)

このような贈与については、贈与税の申告期限(2021年3月15日)が未到来ですし、相続税のみが課税されることとなっていますので、贈与税の申告を行う必要はありません。

3年以内贈与加算の対象となり、贈与財産額について、相続税の課税価格に加算して、相続税の申告を行わなければならないことについては、②と同じです。

ただし、贈与税の課税はありませんので、相続税からの引き算がなされることもありません。

以上の結果として、贈与により生じる税負担は、㋐贈与財産額についての相続税のみになります。

4 贈与税が課税されない特例の適用を受けることはできますか?

贈与税については、特例の適用を受けることにより、贈与税が課税されないこととなることがあります。

このような特例としては、以下のものがあります。

・ 贈与税の配偶者控除

・ 直系尊属からの住宅取得資金の贈与

それでは、上記の①、②の場合に、贈与税の期限後申告を行う際、これらの特例の適用を受け、贈与税が課税されないものとすることはできるのでしょうか?

結論としては、贈与税の期限後申告では、これらの特例の適用を受けることはできません。

これらの特例の適用を受けるには、贈与税の申告を期限内に行うことが条件となっているからです。

他方、上記③の場合については、贈与税の申告期限は到来していないわけですから、贈与税の申告期限(2021年3月15日)までに申告を行い、特例の適用を受けることとすれば、贈与税を非課税とすることができます。

そして、このようにして贈与税が非課税となった場合については、相続税の3年以内贈与加算も行われないこととなります。

以上の結果として、贈与により生じる税負担は0円になります。

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