相続欠格について
1 相続欠格の制度
民法は、一定の親族が法定相続人に当たるものとし、遺言で別段の定めがなければ、これらの者が財産を相続できるものとしています。
しかし、法定相続人であれば、必ず財産を相続できるというわけではなく、相続人が相続権を失う場合として相続欠格の制度を設け、相続人が、相続に関して不正、不当な行為をした場合に、相続人の資格を法的に喪失させることとしています。
つまり、相続人に重大な非行がある場合には、法定相続人であっても遺産を相続することはできません。
2 相続の欠格事由
民法は、次の5つの場合が欠格事由に当たるものとしています。
① 被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を故意に死亡するに至らせまたは至らせようとしたため、刑に処せられた者
② 被相続人が殺害されたことを知って、告発せずまたは告訴しなかった者
③ 詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をすること、遺言を取り消すことまたはその変更をすることを妨げた者
④ 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、遺言を取り消させまたはその変更をさせた者
⑤ 被相続人の遺言を偽造、変造、破棄または隠匿した者
ただし、⑤について、判例は、破棄または隠匿行為が不当な利益を目的とするものではなかったときは、欠格事由には当たらないものとしています。
例えば、相続人が自分にとって有利な内容の遺言を紛失してしまった場合は、不当な利益を目的として隠匿したとは考えられないので、欠格事由には該当しないとされています(最判平成9年1月28日民集51巻1号184頁)。
3 相続欠格の効果
欠格事由に該当すれば、相続人は、裁判の宣告等の手続きを経ることなく当然に相続権を失います。
さらに、欠格者は遺贈を受けることもできないと定められています。
欠格事由について争いがあるときは、相続権存否確認の訴え等の民事訴訟で、欠格事由の有無を裁判上確定することになります。
管轄裁判所は、被告の所在地または被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所になります。
4 欠格者に直系卑属(子や孫)がいる場合
欠格者に直系卑属(子や孫)がいる場合は、その直系卑属(子や孫)は、代襲相続人になることができます。
つまり、相続欠格になる人がいたとしても、その人に子や孫がいれば、子や孫は、相続権を主張することができることとなります。
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